2010年3月29日月曜日

目玉焼きの正しい食べ方

レストランで目玉焼きを注文し、フォークとナイフを使って食べるにはどういう風にして食べたらもっとも正しいのだろうか。昔、伊丹十三さんが書かれているエッセイの中でも、この事が取り上げられていたと記憶している。伊丹さんの三択は確かこうだ。(記憶が曖昧)

1. 白味も黄味も食べたいサイズにどんどん切って食べる。お皿が黄味で汚れようが一切気にしない。

2. 外側の焼けている白味から順に切っていって、最後に残った真ん中の半生状態の黄味を壊さずにフォークで掬って口に入れる。この方法だとお皿は汚れない。

3. ボーイがテーブルに料理を運んできたら、フォークとナイフを持つ前に先ずテーブルの上に置かれたお皿に向かって屈み込むようにして目玉焼きに唇を当てる。そして黄味の生の部分を先にきれいに吸い取ってしまう。それを済せた後でフォークとナイフを持つ。

随分昔の話になるが、喫茶店のテーブルの上にガラス製の鳥の上半身が置物としてあったのをご記憶されているだろうか。首が長く、頭の上には帽子が着せられている。下部には何かしらの液体が入っている錘があって頭部とのバランスがとられている。客が鳥の頭を押して首を振らせると鳥は前後運動を繰り返し、何度目かの拍子にテーブルに頭を近づけて何かを飲んでいるような仕草をする。液体は拍子の役目をしていたように思う。

目玉焼きの正しい食べ方などはなく、自分勝手に好きなように食べたら良いと言うのが伊丹さんの結論だったと思うが、私は三番目の目玉焼きに口を当て黄味を吸い取ってしまうやり方とガラス製の鳥の動きとがどうにも重なってしまい時々思い出してしまう。

ある時のレストランの光景を想像してみよう。客の誰かが突然しきりに首を前後に振りだし始めた。その男が何度目かの前後運動の後でテーブルにキスをしているような仕草に移ったら、「ハハァー アイツは目玉焼きを注文したな!」・・・とこちら側の席からもそれが分かるようになる。

しかし複数のお客が一斉に目玉焼きを注文したらどうなるだろう。客席のあちこちで人々が首を振り始め、レストランの中は騒然となる。落ち着いて料理を楽しみたい人は次第に目玉焼きを扱っていないレストランを探すようになる。そしてどうしても目玉焼きが食べたくなったら自分で作るようになり、家の食卓で心置きなく首を振り始める。

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